医食同源 ~ある血液内科医のブログ~
医食同源 ~ある血液内科医のブログ~
当院のアイドル
今月,ある女の子が2歳の誕生日を迎えました
その子の母親の病名は,「無巨核球性血小板減少症」。血液の細胞のうち,止血の役割をする血小板のもととなる巨核球が何らかの原因によって造られなくなってしまう病気です
そのため,血小板の数が減ってしまい,容易に出血を引き起こしてしまいます
彼女と出会ったのは,約10年前…現在の勤務先とは異なる病院でした。以前より血小板が少ないことを指摘されていた彼女は,大分県に移り住むのと同時にある病院の血液内科を受診しました。そこで…この先,この病気をもつ自分に結婚~出産が可能か聞いたそうです。医師の回答は残酷なもので,一言「無理」とだけ告げられたと聞きました。
当時20代の女性がこの質問をするのに,どれだけの勇気が必要だったでしょうか? 結局,彼女はその後受診することはありませんでした。
その後,歯ぐきからの出血が止まらないために受診した病院で,私の外来に紹介されたのです。彼女は,私にも同じ質問をしました。私は次のように答えました。「あなたが希望するのであれば,私たちは全力でサポートします。」と。
それから,異動のためにいくつか共に病院を移りましたが,某病院の産婦人科スタッフの御尽力もあり8年越しの約束を果たすことができました
ママの受診について来るその子は,今では当院のアイドルです
(本人の写真を載せることはできませんので,私が描いたイメージ図を添えます)
近年,彼女の疾患と同様に血小板の減少する特発性血小板減少性紫斑病に関しては,『妊娠合併特発性血小板減少性紫斑病診療の参照ガイド』が作成されました。同様の疾患を治療中の患者さんは決して独りで悩まず,我々血液内科医に御相談ください
彼女の治療に関しまして,貴重な御意見をいただいた埼玉医科大学病院の宮川義隆教授にこの場を借りて御礼申し上げます。
安藤 健明(血液内科部長 兼 総合内科部長)