医食同源 ~ある血液内科医のブログ~
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「腰痛 + 貧血 = 血液がん?」
2019-07-20
『多発性骨髄腫』という病気をご存知でしょうか?
白血球の一種である形質細胞が腫瘍化した血液がんです。
「多発性」という名が示す通り,全身の骨髄で生じ得ます。その結果,骨がどんどん薄くなってしまい,咳をしただけで肋骨が折れる,ベッドに移ろうと手を付いた際に腕の骨が簡単に折れるといった病的骨折が起こることがあります。最も折れやすいのは荷重がかかる背骨で,圧迫骨折による激しい腰痛を訴えます
高齢者ほど罹患率が高い疾患で,発症の平均年齢は64.5歳です。高齢者には一般に腰痛や骨折がよくみられますが,腰痛に加えて貧血,蛋白尿などの腎障害などを認める場合には多発性骨髄腫が強く疑われます
貧血の原因は,骨髄が腫瘍細胞で満たされて正常な赤血球が造られなくなるためと,腎機能の悪化に伴い赤血球を造るのに必要なエリスロポエチンというホルモンが少なくなるためです。
長い間治療法に進歩がみられず難治性であった多発性骨髄腫ですが,2006年以降はベルケイド,サリドマイド(商品名サレド),レブラミド,ポマリストなどといった新規薬剤が次々と承認され,コントロールできる病気になりつつあります。当院でも多くの新規薬剤を用いた治療を積極的に行っております。
早期発見,早期治療が重要な病気ですので,持続する腰痛を認める際には血液内科受診をお勧めします。原因不明の貧血のある方も,ぜひ御相談ください。
安藤 健明(血液内科部長 兼 総合内科部長)