医食同源 ~ある血液内科医のブログ~
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氷は好きですか?
2019-07-19
「異食症」という言葉をご存じでしょうか?
異味症,異嗜症とも呼ばれ,「氷をかじりたくなる」という鉄欠乏性貧血の患者さんにみられる症状の一つです。
冷たいものが好きというわけではなく,氷のような硬い塊をボリボリかじりたくなるという不思議な症状です。そのため,氷の代わりに飴玉をかじる方もいます。
何故このような症状が生じるかはよく分かっていませんが,昔の専門書にも「生米や壁土を食べること」という記述があります。現代では,生米よりも氷の方が手軽に手に入るということなのでしょう
ところが,健康診断などで貧血を指摘された患者さんは,「自分の『氷かじり』はただのクセ」のように思っていることがほとんどです。そのため,診察室で「氷をよく食べませんか?」と尋ねると,驚いた表情で「はい・・・」と答えられます。
ある調査結果では,鉄欠乏性貧血患者の約14%に異食症が認められました。より高度の鉄欠乏状態が長く続いている患者さんに多く見られる傾向があるようです
このように謎の多い症状である異食症ですが,鉄剤の内服を開始すると数日以内に消えてしまいます。患者さんによっては,数年間続いていた「氷かじり」がわずか数日間で見られなくなるのです。
鉄欠乏性貧血の多くは,原因となり得る病気があります。そのため,貧血と言われた方はもちろん,異食症に心当たりのある方も一度血液内科外来を受診することをお勧めします。
安藤 健明(血液内科部長 兼 総合内科部長)