医食同源 ~ある血液内科医のブログ~
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生活習慣病と関係が深い睡眠時無呼吸症候群
2025-03-03
春眠暁を覚えず…
3月に入り,少しずつ暖かくなってきた今日この頃です。
『睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome;SAS)』という病気をご存知ですか?
文字通り…「睡眠時に無呼吸状態が繰り返される病気」で,眠っている間に呼吸が止まっている状態のことを指します
詳しく言うと…10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸と定義し,その無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上,もしくは1時間当たり5回以上あれば,睡眠時無呼吸と診断します。
ご自身ではなかなか気づくことができず,心配した家族に勧められて受診される方が多い印象です。自覚がないために受診を控える方が多いのも事実ですが…この病気が深刻な点は,寝ている間に生じている無呼吸が,起きている時の私たちの活動に様々な影響を及ぼすこと,気づかないうちに日常生活に様々なリスクが生じる可能性があることです。
睡眠は,日中に活動した脳や身体を十分に休息させるためのものです。ですが,睡眠中に無呼吸が繰り返されることで,身体の中の酸素が減っていきます。すると,その酸素不足を補おうと心拍数は増加してしまい,寝ている間にも脳や身体には大きな負担がかかってしまいます。その結果,日中に強い眠気や倦怠感,集中力低下などが引き起こされ,様々な活動に影響が生じてしまうのです。居眠り運転がその一例で,睡眠時無呼吸症候群患者の交通事故率は健康な人の約7倍という海外データもあります。
冒頭の「春眠暁を覚えず…」は「春の夜は眠り心地がいいので,朝が来たことに気づけずつい寝過ごしてしまう」という意味ですが.この病気の場合は「夜に十分に眠れないので,朝が来ても疲れが取れない」ということになってしまいます。「ちょっと疲れているだけ」,「いつものこと」で終わらせずに日常生活を振り返ってみて,以下のセルフチェック6項目のうち1つでも該当すれば検査をお勧めします。
1. 毎晩,大きなイビキをかく.
2. 「睡眠中に呼吸が止まっていた」と指摘されたことがある.
3. 昼間,眠くなることがある.
(居眠り運転をしそうになったり,会議中にウトウトしてしまうことがよくある)
4. 朝起きた時,寝たはずなのに疲れが残っている感じや頭重感・頭痛がある.
5. 若い頃より,体重が増えて,顔つきが変わったと言われる.
6. メタボリックシンドロームの傾向がある.
検査には簡易検査と精密検査があり,当院では…まずご自宅で簡易検査を受けていただき,睡眠時無呼吸症候群が強く疑われる場合に入院での精密検査を受けていただきます。
睡眠時無呼吸症候群は,高血圧・糖尿病・心不全・脳卒中などと密接に関連(一般の方の約2~5倍との報告あり)しており早期診断および早期治療が望まれますので,一度かかりつけ医や当院にご相談ください。
安藤 健明(血液内科部長 兼 総合内科部長)
