医食同源 ~ある血液内科医のブログ~
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新型コロナウイルスワクチンと心筋炎
2021-08-26
別府市では,2021年8月23日より12歳以上30歳未満の方の新型コロナウイルスワクチン予約が開始されました。
これに伴い,別府市におけるワクチン接種対象は「12歳以上の希望者」に拡大されます
このワクチン接種に関連して…接種後の心筋炎が問題となっています。特に,若年男性への接種後に発症することが多く,そのために接種するかどうか迷う人がいるかもしれません
心筋炎とは,心臓を動かす『心筋』に炎症が起こる病気です。一般的に,女性よりも男性に多く発症し,その発症率は幼児,青年,若年成人で最大となります。胸痛,呼吸困難,動悸などの症状がありますが,重症度は患者によって異なります(心不全やショックに至ることもあります)。
新型コロナウイルスワクチン後の心筋炎は,接種した3~4日後に10万人に1人の頻度で起こります。青年~若年成人に多く,男性に多い傾向(全体の75%)は通常の心筋炎と同様です。mRNAワクチンであるファイザー製およびモデルナ製のいずれのワクチンでも起こり,2回目接種後に多く見られます(全体の約80%)
ですが,若い人が新型コロナウイルスに感染すると,2.3%の患者が心筋炎になるとの報告があります。10万人に2300人の頻度となり,ワクチン接種後の心筋炎を大きく上回ります。また,ワクチン接種後の心筋炎は軽症で済む人がほとんどで,死亡例の報告はありません。
以上の理由から,ワクチン接種により新型コロナウイルス感染の重症化予防を図るメリットの方が圧倒的に大きいと考えられ,日本循環器学会もワクチン接種を推奨しています
もちろん,心筋炎の発症に備えることは必要ですので,特に若い男性においてはワクチン接種後7日間は運動や激しい身体活動は避けていただき,動悸,息切れ,胸痛などの症状を自覚された場合は速やかに医療機関を受診して下さい
安藤 健明(血液内科部長 兼 総合内科部長)
